約 45,019 件
https://w.atwiki.jp/shareyari/pages/107.html
作者:月下の人 ◆WXsIGoeOag 【前作】 【1】 【2】 【3】 【4】 【5】 【6】 【次作】 「…チッ。まァいい」 一触即発の睨み合いから、男は顔を逸らした。 「水野晶。おめェをおびき出したのは勧誘のためだ。俺ァ女子供に手ェ出す趣味はねェ」 「…か…勧誘…?」 「俺ァある男の依頼を受けてきたンだ。名前は言えねえがそいつぁ能力研究者でなァ、 能力の発展のためにおめェの能力を調べさせてほしいって言ってやがンだ」 「僕の能力…って動物の心が視えたり伝えたりするだけで…」 「そうなのか? まあ俺ァ依頼主の考えなんざ知ったこっちゃねェがな」 陽太が一歩踏み出す。 「ゴスロリの次は世紀末か…俺を狙う組織!」 「あァ、大根はいらねェ」 見事な即答。 顔は見えないけど、ちょっと、いやかなりショックを受けてたのが見てとれた。 「って…ゴスロリって?」 「………」 あらら、陽太かわいそう。背中に哀愁が漂う。 そんな陽太に少し和んでいたところに男の太い声がかかり、僕は急に現実に引き戻される。 「で、どうだィ? 長い拘束も危険もねェ、謝礼も弾むって話だ。どうする、水野晶」 「そ、そんなこと…まずその犬を解放してあげなさいよ!」 「おォ、忘れてたぜ。悪かったな」 男は右手にぶら下げていた犬を、屈んで解放する。幸い犬は健在のようで、道の奥へと全力で逃げていった。 放すとき、犬に向かって何事か小さく呟いたように見えた。 「で、どうするよォ、水野晶!」 「そ…それは………」 嫌だ絶対に嫌だ。こんな怪しい男について行きたくない。こいつの言うことなんてまるで信用できない。 でも断ればこいつは乱暴な手段に出るに違いない。そうなったら陽太が…… 「断る」 答えに窮している僕を尻目に、きっぱりと答えたのは陽太だった。 「おめェには聞いてねェンだがな」 「まっとうな勧誘ならまっとうな奴をよこせばいい。てめぇみてえな世紀末野郎が出てくる時点で怪しさ満点だろうが。 前の犬もどうせその依頼主とやらの差し金だろ。んな怪しい組織に晶をあずけられるかよ」 「おめェは何だ。水野晶の保護者か何かかァ?」 「てめぇが気に食わねえ。だからてめぇの思い通りにはいかせねえ。そんだけだ」 「…そうか。そいつァ残念だ」 「残念? よく言うぜ」 陽太の右手がそろりと後ろのポケットに向かう。そこにはさっきの… 「最初っから腕ずくで連れてくつもりだったんだろうがっ!!」 手を出すや振られる右腕、高速で男に飛来する円盤、ハードクラッカー。 「おいおい、俺ァ…うォッ!?」 こと、かた焼きは男のすぐ脇の排水管に当たり、派手な音と共に粉々に砕け散る。 「ジョー…ブレイカー!」 「って名前変わってるし!?」 僕の言葉を無視して、握り、一呼吸置いて開かれる右手。同時に出現した数枚のかた焼きを、一気に投げる陽太。 男の頭に胴体に脚に、唸りを上げて迫るかた焼き。あれは回避は難しいはず… 「うォあッ!? 喧嘩っ早えガキだなオイ!」 言いながら男は広げた両手をこちらへ向けた。瞬間、地面から生えるように出現した壁が男を覆い隠す。 男に向かったかた焼きは全て壁にぶつかり、はじけ飛んだ。 「チッ、やはりかっ! だったらっ!!」 陽太は再度右手を握り、開く。そこには… 「なっ、馬鹿なっ!? 出ない!?」 「えっ!? 何で!?」 開いた右手は空。陽太につられて僕も驚愕する。しかし僕は意識を少し周囲に向けて、すぐに気付く。 「違う陽太、もう夜になってる!」 「なっ……なんだ夜か。…チッ」 悔しげに舌打ちする陽太の反応に強い違和感を感じた。陽太は夜の能力でこそ真価を発揮するのだから。 「え、なんで? 夜になったら嬉しいんじゃ…」 「確かに昼の万物創造(リ・イマジネーション)に比べ夜の叛神罰当(ゴッド・リベリオン)は強力だが…」 先程、男の生み出した壁を見やる。地面と同じ灰色の壁は、かた焼きのぶつかった場所に亀裂が入っていた。 「奴はあきらかに時間稼ぎをしていた。それはつまり、奴も俺と同じ…」 亀裂が伸びて、やがて壁全体に広がる。壁は端から不安定に崩れ始める。 「夜の能力が本場。防御じゃねえ、戦うための能力ってわけだ」 そして、ガラガラと一気に崩壊する壁。奥に立つ人影。 「そォいうワケだ」 男は不敵に口元を歪ませていた。 ハッと気付いて振り向いた。しかし依然、背後の道は完全に閉ざされていて、僕は落胆する。 「あの壁は崩れないんだ…」 「奴の能力はたぶん、一定時間で崩壊する壁を出す能力だ。出したらもう管理の外。昼夜は関係ねえってわけさ」 「ハッ、いい洞察力だ。能力がも少しマシなら仲間にしてェくれえだぜ」 「神に叛く能力を舐めんなよ。罰が当たるぜ」 「そりゃあ…」 あんたにでしょ、と出かけた言葉は呑み込んだ。そんなことを言っていられる雰囲気ではなかったから。 「おめェの能力は知ってる。最初に言っとくが、その能力じゃ勝ち目はねェぜ?」 「前に見たことを言ってんだったら甘いな。俺はまだ能力の片鱗も見せちゃいねえ。 武器はこの世界に無限に存在するんだぜ? 無限の可能性、それが俺の叛神罰当だ」 「どォしてもやるってか」 「ああ、こっからが本番だ」 そう言って両手を合わせる。久しぶりに見る、陽太の能力発動ポーズ。 しかし、何も出さずに手を離した。 「おっと、その前に。名乗れよ、それが流儀だろう。俺はとっくに名乗ったんだぜ?」 「そりゃあ…まァいいか。当然本名じゃねェがな」 男はボリボリと頭を掻く。 「俺はベン。隔離と戦闘を単独でこなす、便利屋のベンだ。そう呼ばれてる」 「そうか。刻んだぜ、ベン」 陽太は腕を組みうなずく。そして、ゆっくりと目を開き、大きく息を吸う。 「俺の名は岬月下! お前を倒す男の名だ! いくぜベン!!」 「おォ、来てみろ月下ァ!」 「はあああぁぁぁ…」 陽太は片膝をつき地面近くで手を合わせ、力を込める。 「出でよ!」 一気に立ち上がると同時に右手を高く振り上げる。 「魔剣!」 天に向けた右手から出現する純白の大根。 「レイディッシュ!!」 大根は右手一本で袈裟に振られ、4時の位置でピタリと停止した。 「………」 「………」 沈黙。場を支配する妙な空気。 「………」 「…その無駄な動きはナニ?」 無粋なツッコミは自重するつもりだったけど、さすがに言わずにはいられなかった。 <続く> 登場キャラクター 岬陽太 水野晶 ベン 上へ
https://w.atwiki.jp/jujin/pages/791.html
夏の邂逅 青々と茂る街路樹の道をバイクで駆け抜ける。 夏の空気がさわやかな風となって、純白を保つわたしの尻尾を吹き抜ける。 大人達はまだまだ仕事に勤しみ、学校を終えた子供達が遊びの計画を立て始める、そんな時間帯。 今日の修理の仕事は予想外に早く終わった。難航すると予想していただけに、とても気分がいい。 さて、これからどうしよう。街に繰り出してみようか。 少し遠出をして、海沿いの道を走るのも気持ちいいだろうな。 アイツと行った、あの海沿いの道。 よし、アイツに会いに行こう。 昨日の今日会ったばかりだって? いいじゃない。大学時代は毎日のように顔を合わせてたんだから。 あの学園には、アイツからバイク関連の呼び出しを受けて行くのがお決まりのパターンだけど。 用事がなくても、たまにはわたしから会いにいってもいいよね。 アイツってば全然こっちの仕事場には顔を出してくれないんだから。 まあ、それだけ教師の仕事も忙しいんだろうけど。少し待ってみて会えないなら別に何か考えよう。 ふふ、アイツは元気にしてるかな。この暑さにばててたりしないだろうか。 弾むような気分で、わたしは佳望学園へとバイクを走らせた。 学園に人影はまばらだった。本来なら下校を始めているであろう子どもたちの姿も見えない。 おかしいなと疑問に思ったが、すぐに気付いた。そうか、学生はもう夏休みなんだ。 いつもよりだいぶ少ないとはいえ、学園に人の気配は十分に感じられた。 校舎からは管楽器の演奏が、グラウンドからはバットにボールが当たる小気味の良い音が聞こえてくる。 何度かお世話になっている自転車置き場に愛車を止めて、誰かいないかと見回しながら学園の敷地内を歩く。 用もないのにいきなり訪ねていって、アイツの仕事の邪魔をしちゃいけない。 アイツに知られず確認するなら、生徒の誰かに聞くのがいいだろう。 お、あの子は…ちょっと小さいな。あれは…いやもっと真っ白で… ……あれ? 見知った顔を探していたつもりが、いつのまにか白いふさふさの尻尾を探していた。 そんな自分に気付いて苦笑する。わたしったら、あの子にも会いたかったのかな。 毎回毎回、そう都合よくは会えないだろう。 やがて、グラウンドを外れた広場でキャッチボールをする知った顔を見つけた。 あの子達は確か… 「おーいタスクくーん!ナガレくーん!」 投げようとした手を止め、振り返った犬の少年が驚いた声を上げる。 「あれぇ?えっと…すぎも」 「ミナでいいよ!」 前にもこんなやりとりしたなあ。あの少年の真っ白な毛並みを思い出してクスリと笑う。 「いいなあ、夏休みかー。君たち今日はどうしたんだい?」 「今日が終業式だったんです。半日でしたけどまだ残ってる人はいますよ」 「ふーん。あれ、もう一人の…アキラ君は今日は?」 「ああ、それがあいつ…期末の数学でひどい点とって、今サン先生の 『数学の苦手を吹っ飛ばせ!サンのスーパー補習講座!』受けてるんです」 「ははは、そっか。じゃあサンは今忙しいのか」 「えっと、サン先生に用事ですか? できるまで徹底的にやるって言ってたからいつ終わるのかわかりませんよ」 「ん、わかった、ありがと。こっちも大した用事じゃないんだ。ちょっと待っててみるよ」 「待つならあそこのベンチがいいと思いますよ」 タスク君が指さした先には並ぶ植木と、その下にベンチが一つ。あそこなら校庭全体がよく見えそうだ。 「おっ、いいねえ! 気が利く男子は女の子にもてるぞタスク君!」 「やっ、やだなあ…何言ってるんですか」 恥ずかしそうに否定するタスク君とナガレ君に軽く別れを告げて、わたしは彼が教えてくれた場所へ向かった。 普段から多くの人が使っているであろう、空色のベンチ。木陰に吹き抜ける風は涼しく、夏の暑さを感じさせない。 近くに自販機もある。校庭が一望できて、人の出入りも確認できる。いい場所を教えてくれたタスク君に感謝しよう。 さてと、どれくらい待ってみようかな… 「……来ない」 何度思ったかわからない心の声が、つい口から出ていた。 傍らのグローブとボールを見やり、小さく息を吐く。これを使っていた二人はもう帰ってしまった。 返却は運動用具倉庫の隙間から放り込んでおけば問題ないらしい。アバウトな学園だ。 高かった太陽は今は大きく傾き、学園は夕暮れの雰囲気に包まれていた。 吹奏楽部や野球部の音もやがて消え、教師の帰る姿も見られる。 それでもアイツの姿は見えない。 わたしも最初はこんなに待つつもりはなかった。ここに来る前から決めていたことだ。 ある程度時間を決めて、それで会えなかったら今日は諦める。そう決めていたのに… 時間になった。アイツも忙しいんだな。仕方ない、今日は帰ろうか… でも、もう少し待ってみよう。もうちょっと待てばアイツがひょっこり顔を出す気がする。 いやいや、もう少し。あと十分。あと五分… そんな感じでもう少し、もう少しが重なって、結局こんな時間まで待ってしまった。 まるで煮え切らない情けない自分に苦笑する。 …なんでだろ。わたし、こんなにもアイツに会いたかったのか。 目をつぶり、大きく息を吸って、吐いた。このもやもやした気持ちごと吐き出すように。 何をやってるんだ、杉本ミナ! お前はもう大人の女なんだろ。 いつまでもうじうじしてるなんて大人失格だぞ! 「よしっ、帰ろう!」 自分を叱咤して、勢いをつけて立ち上がった。暗くなる前に帰ろう。今日はさよならだ、佳望学園。 大きく伸びをして、最後の挨拶のつもりで学園を見やった。 ふと、ある一点で目が止まった。教職員出入り口辺りに佇む人影がひとつ。 アイツではない。スラリと背筋の伸びた犬の女性。実際に会ったことはないけど、わたしはその姿に心当たりがあった。 そうだ、あの人は… 自然と、わたしの足はそちらへ向かっていた。 近づく背中。はっきりしていく姿。 結わえた後ろ髪に、ゆったりと揺れる尻尾。 「………」 「…あ、あの、はじめまして!」 少しの間躊躇ったが、思い切って声をかけた。 耳を倒さないよう、尻尾を太らせないように強く意識する。 振り返る彼女の前髪がふわりと揺れる。 「あら、あなたは…」 「無断で学園に入って申し訳ありません! あのわたしサン…先生の知り合いで杉本ミナっていいます、はじめまして」 正直緊張していたわたしは、必要なことを一気にまくしたてた。 大丈夫だよね。言ってること間違ってないよね。 「前にも学園に来てたわね。はじめまして杉本さん、私は教師の英です」 やっぱり。この人が英先生だ。 部外者のわたしが学園にいることで注意されないか不安だった。 柔らかく微笑む英先生の姿に、わたしは心の底から安堵する。 「サン先生に用事かしら? 生憎彼はまだ仕事中なのよ。そろそろ終わるころだと思うんですけど…」 「いえ、いいんです。大した用事ではないので」 「もう終わってるかもしれないわね。職員質に帰っているようなら呼んできましょうか?」 「いえいえ! お仕事を邪魔してはいけないので!」 「そう…わざわざ来てくださったのに悪いわね」 「わたしは大丈夫ですので…その…」 言葉に詰まる。今言うべきことがあるのに、その言葉が出せない。 初対面のこの人に失礼にあたるのではないか。迷惑をかけてしまうのではないか。 でも、今を逃したら次のチャンスはいつになるかわからないのだ。 今だ。今言わなければ… 「…あ、あの!」 意を決して声を出した。英先生は少し驚いた顔を見せる。 「なにかしら?」 「英 美王先生…ですよね」 「あら…?名前まで言ったかしら?」 「その…あなたのことは前から知ってたんです。サン先生に聞いてました」 「あら、そう、彼が…」 「それでずっと、直接お会いして話してみたいと思ってたんです」 今言うべきことは言った。わたしは不安に押しつぶされそうになりながら、黙って答えを待つ。 「そうでしたか…」 英先生は少し考えた後、わたしの隣を抜けて歩きだした。慌てて目で追う。 「え? あの!」 「ここで立ち話もなんですから。そうね、あそこのベンチでいいかしら?」 「あ、ありがとうございます!」 「いえいえ、私も少し休憩しようと思っていたのよ。ちょうどよかったわ」 英先生を先に少し歩いて、先程まで座っていたベンチに今度は二人で座った。 どう切り出せばいいか困っていたわたしに気付いて、英先生が先に口を開いてくれた。 「改めてはじめまして。英語教師の英美王です」 「あ、はい、はじめまして。サン先生の知り合いの杉本ミナです。父とバイク屋をやってます」 「サン先生と知り合ったのはバイク関係で?」 「いえ、大学時代からの友人です」 「え…あなたは…?」 「…?」 何か疑問を感じたようで、英先生の言葉が止まる。わたしはなんのことかわからず首を傾げる。 「…あ、いえ、なんでもないわ。ごめんなさい、忘れてちょうだい」 「あ、はい」 少し考えて自己解決したようだった。 「それであなたは…サン先生から私のことを聞いていた、と?」 「はい。結構よく話してました」 「厳しくて口うるさい人?」 「えっ、ええっとその……はい。そんなことも言ってましたけど… でっでもその全然そんなことないですよ!わたしはとっても優しくていい人だと思ってます!」 慌てて否定するわたしを見て、英先生は優しく微笑む。 「ふふっ、ありがとう。でもいいのよ、その通りなんだから。 何が良くて何が悪いかなんて、結局その人の価値観でしかないわ。 彼の判断で良かれと思ってやっていることも、私はきっと否定してしまっている。 そんな私ですもの、嫌われても仕方ないと思うわ」 「そんなことありません!!」 思いもよらない一言に、つい声が大きくなってしまった。英先生ははっきりと驚いた顔でわたしを見ている。 「あっ、ごめんなさい…」 「そんなことって?」 「その…英先生が嫌われているなんて…そんなことないです」 そんなことない。 アイツはこの人のことを悪く言わない。直接話してこの人から受けた印象は、アイツの話から受けた印象のままだった。 話の内容こそ愚痴でも、どこか嬉しそうな調子を感じる。 サンは英先生のことを決して嫌っていない。いや、むしろ……… 「英先生は…サンのことをどう思ってるんですか?」 ほとんど無意識に、ポツリと言葉が出た。 「え…?」 言葉が出て、英先生の小さく驚く声を聞いて…やっと気付いた。 「あ…!」 耳がカッと熱くなるのを感じる。なんてこと聞いてるんだわたしは。 確かに聞きたかったことではあるが、これはさすがに直接的すぎる。 「あ、いえあのそのっ! サッ、サンの仕事って直接見たことないので! 教師としてのサンはどんななのかなって思って!」 慌てて手を振りながら、なんとかフォローした。 英先生は、ふふっ、っと小さく笑って答えてくれた。 「そうね…たまに提出が遅れたりするけれど、基本的に仕事は真面目にやってるわ。 関係ないことをやっているように見えても、ほとんどの場合期限までにはきっちり仕上げてくる。仕事の効率がいいのね。 初中高等部を兼任していて誰よりも忙しいはずなのに、そんな様子は全く感じさせない。 授業もわかりやすいって生徒にも大人気。私よりもずっと優れた教師よ、彼は」 「そう…なんですか…」 サンがすごいヤツということは大学時代からよく知っていた。 そう、わたしがどうやってもこの人には敵わないと、教師になることを諦めるほどに。 しかし、わたしとは経験が違う現役のベテラン教師からも、そこまで評価されていたとは… 「…驚きました」 「ふふっ、そうね。私も最初はそう思ったわ。 あ、私がこう言っていたことはサン先生には内緒にしてね。あの人きっと調子に乗っちゃうから」 「あはは、そうですね。サンには内緒にしておきます」 改めて思った。すごいヤツだったんだ、アイツ。 「彼のことは……そうね、尊敬、してるわ」 「尊敬…ですか」 「ええ」 尊敬…か。 どこかほっとしたような、嬉しいような気持ち。驚きと、ほんの少しの疑惑。 それらの感情がぐるぐるとわたしの中で渦を巻く。 「…不思議な人」 「…え?」 考え呆けていたわたしは、英先生が続けて発した言葉に反応するのに、少しの時間を要した。 それに気付いていたんだろう、英先生は一呼吸おいてから、言葉を続けた。 「普段の彼とは違う別人のような一面、感じたことはあるかしら?」 「あ…あります!」 想定外の言葉に驚いたが、確かに、そういうことがあった。 何度か感じたことがある。例えば、中睦まじい母子を見たとき。若いカップルを見たとき。 それ以外にも時折。アイツの顔が、言葉が、まるで別人のように感じることがあった。 わたしの答えを受けて英先生は、そうね、彼は…と続ける。 「子供みたいな人かと思えば、不意に別の…大人の顔を見せることもある。 まるで別人のようだけれど、それもまた紛れもなく彼自身で。 まだ若いのに、私よりもずっと深く複雑な人生を歩んでいる…」 英先生。この人… 「彼のことを、もっと知りたい。私はそう思っているわ」 この人は…もしかして… 「…どう? 質問の答えになったかしら?」 「あ…」 そこまで言われてはっと気付く。英先生はつい出てしまった最初の質問に答えてくれていたんだ。 「は、はい! ありがとうございました!」 またしても耳に熱が集まるのをわたしはじんじんと感じていた。 「その…すみません。失礼なことを聞いてしまって…」 「ふふっ、いいのよ。なんだか学生時代を思い出したわ」 「そう…ですか…」 この状況でまた聞くというのは気がひけた。 でもそれ以上に、新たに生まれた疑問を聞かずにはいられなかった。 「英先生。あなたは…」 「…?」 「あなたはサンの過去…フリードリヒのこと…知っているんですか?」 わたしは知らない。噂はいくつかあったけど… ドイツ出身。本名はフリードリヒ。確かなのはそれだけだ。 わたしが何度聞いてもはぐらかされてしまう。たぶん誰にも話していなかった、サンの過去。 この人はもしかして、それを知っているんじゃないだろうか。 しばらく考えていた英先生が、やがて口を開いた。 「……知っているわ」 「それは…サンから…?」 「ええ。彼から聞いた話よ」 …やっぱり。 この人はわたしとは違う。サンにとって、特別な人なんだ。 予想はしていたので、驚くことはなかった。しかし… 「そう…ですか…」 感じた落胆は小さくなかった。 俯いていたわたしの耳の付け根に何かが触れる。 柔らかく頭を撫でるそれは英先生の手だった。 「あなたは…本当にサン先生のことが好きなのね」 顔を上げると、微笑む英先生。まるで母のようだ、そう感じた。 「えっ…と…その…」 「わかるわよ。私だって元、女の子ですもの」 「…はい」 わたしを撫でる手から、英先生の優しさが伝わってくる。気持ちいい。心が安らぐ。 「大丈夫よ。あなたの気持ちはきっと彼に届くわ」 「………」 わたしはしばらくの間、彼女の優しさに身を委ねていた。 少し経って、わたしを撫でていた手がピタと止まった。 その手を口元に当てて少し考えた後、英先生はポツリと呟く。 「最終的にはちゃんと言わないとわからないかも…」 「やっぱり…そうですかね」 「あの人そういうことには鈍感っぽいもの」 「英先生もそう思うんだ…」 ベンチに置いていたわたしの手に、英先生の手が重なった。 口調が、わたしに向けたものに変わる。 「でも焦ることないわ。あなたたちはまだ若いんですもの」 「そんな、英先生だって」 「いいのよ。私のことは気にしないで」 わたしの手が持ち上げられ、英先生の両手に包みこまれる。 「過去の話だって、いつか彼の方から話してくれるわよ」 「そう…ですかね」 「ええ、きっと。あなたを応援してるわ、杉本さん」 「ありがとうございます…英先生」 沈んでいた気持ちは、わたしの中からすっかり消え去っていた。 空に一番星が輝きだした。英先生がベンチから立ち上がる。 「さてと、そろそろ仕事に戻らなくちゃ」 しまった。英先生がまだ仕事中だということを完全に失念していた。 英先生に続いてわたし慌てて立ち上がり頭を下げた。 「仕事中に長く付き合わせてしまって申し訳ありません!」 「そんな気にしなくていいわよ。私もいい気分転換になったわ」 わたしの体を起こして、英先生は言葉を続ける。 「そんなにかしこまらないで。私たち、せっかくこうやって知り合えたんだから」 ね、杉本さん。そう言って英先生は微笑む。 そっか。そうだよね。それじゃあ… 「ミナでいいですよ!」 わたしは返す、いつもの言葉。 「そうね。私も美王でいいわ、ミナさん」 「美王先生!」 わたしはもう一度頭を下げる。心の底から示す、感謝の気持ち。 「今日は本当に…ありがとうございました。美王先生と会えてよかったです」 「ええ、私もよ。ミナさんと会えて嬉しかったわ」 極自然に、わたしたちは握手を交わした。 「よかったら、また後でゆっくり会いましょう。今度は仕事中じゃないときにね」 「そうですね。嬉しいです、美王先生。またどこかで」 別れを告げた後は、その姿が校舎内に消えるまで、わたしはずっと美王先生の後ろ姿を見つめていた。 あの人が英美王先生。サンにとって特別な人。 すごく美人で、わたしよりもずっと大人で。 その姿から。立ち振る舞いから、言葉から、「気品」というものを感じさせる。 わたしもいつか、あんな人になれるだろうか… ぼんやりと見つめていた校舎から、新たに現れる小さな影。 タタタッと、まっすぐこちらへ駆けてくるその影は… 「あ…」 「や、ミナ!」 今日のわたしがずっと待っていた、サンその人だった。 「どーしたのさ今日は。バイクは問題ないよ?」 「ん…いや別に…若い少年たちに会いたくなってさ。何となくよってみただけだよ」 「またうちの生徒をかどわかしに来たのかー、悪い大人だなー」 「失礼な! いいじゃないたまには」 「でも残念でしたー、終業式で全然生徒いなかったでしょ」 「いいもん! タスク君には会えたもんね!」 「ええっまた!? タスク危ないなー。そろそろミナの魔手から守ってやらなくちゃ!」 「うっさい!」 放った猫パンチはサンの頭の跳ねっ毛に吸い込まれて、ポスン、と期待はずれな音を立てた。 「ミナさあ…実は相当長くいなかった?」 「う…いや…」 はたと止まったサンの目線の先には、わたしが時間を持て余して飲んでいた、三つ重なった空き缶があった。 うーん…失敗した。怠慢しないでちゃんと捨てておくべきだった。 「こんな真夏に何やってんだよ、熱射病になるぞ」 「お生憎様、猫は寒がりなんです。その分暑いのは結構平気なんだよ」 「っていうかホントに長い間何してたわけ?」 「えー…っと…」 言い訳を探すわたしの頭に、不意に ――ちゃんと言わないとわからないかも…―― 美王先生の言葉がよぎる。 そうだよね。逃げてばかりじゃ何も変わらない。ですよね、美王先生。 「サンをさ、待ってたんだよ」 「…え?」 「サンに会いたくて、ずっと待ってたんだ、わたし」 「…何でさ?」 「………ふぅ」 お見事。素晴らしい鈍感っぷりだ。 わたしの気持ちに気付かないまでも、何か感じるものはないのかコイツは。 君が好きだからだよ、サン。 好きな人に会いたいっていうのに、何か理由がいるかい? こんな何かのついでのような場面で、さすがにそこまで言うことはできなかった。 ベンチに置いてあったグローブを、後ろ手にサンに向けてポンと投げる。 もう一つのグローブをはめてボールは右手に、サンに振り返った。 「サンとキャッチボールがしたかったんだよ! ほら行くよ!」 「えっわっ、ちょっと!!」 サンは慌ててグローブをはめると、わたしの球をパシンと受け取った。 「いきなり何するんだよう」 愚痴を言いながらも、サンはいい球を投げ返してくる。 「ハハハ、油断してるサンが悪い」 そうやって話しながら、少しずつ距離を開けていった。 夕暮れの校庭で、サンと二人。ボールと言葉のキャッチボールが続く。 言葉を投げて、ボールを投げる。 「さっきね、美王先生と話したんだー」 「えー、英先生とー?」 「うん。綺麗な人だねー」 「でしょー」 「すごく大人だよね。サンとは大違いだ」 「うるさいよ!」 「アハハハ!」 こうやってサンをからかって笑っている、これがわたしなんだ。 わたしはたぶんこれからも、美王先生のようにはなれないだろう。 でも、これでいい。そう思う。 わたしは変わらない。変わらずに想い続けていれば、この気持ちは届くさ。届かせてやる。 いつかアイツを振り向かせてやる。 グローブの中のボールを、ギュッと握りなおした。 「サン! 覚悟しときなさいよー!」 大きく振りかぶって思い切り投げた速球は、サンの胸の正面でバシンとグローブに収まった。 「…へ? 今何か違った?」 「あ、ひどーい! わたしの思いの丈を込めたボールだったのにー」 「えー、ちょっと速いだけで何にも変わんなかったよー」 「ちぇー、残念」 今はまだ、わたしの気持ちは届かない。 でも、いつかきっと、ね。 やがてキャッチボールの音は止まり、一学期の仕事を終えた佳望学園は、夏の星空に包まれていった。 <おわり>
https://w.atwiki.jp/299nobe/pages/61.html
そんな二人を余所目に炎はますます勢いを強くしていた。 ほんの少し前まで人が暮らしていた建物は見るも無残な炎のかたまりと化して 中から逃げ場を失った熱気が勢いよく窓や扉を吹き飛ばす。 ――ガシャン! 粉々になった窓ガラスと内側から噴出す炎の渦が、身を竦ませて怯える少女にも襲い掛かろうとする。 吹き荒れる火の粉を軽く手で振るい払って、低い声でカインはセシルに問う。 「それよりここは危ない。早く村を出ないと…あの子はどうする?」 セシルはカインの方へ向き直らず、軽く頷いて意思を伝えた。 「ぼくらが連れて行くしかあるまい! さあ…ここは危険だ。とにかく…ぼくらと一緒に!!」 セシルは視線を少女の方へ戻した。少女はまだ呆然と膝をついたままで赤い炎を背に やり場がないように手を宙に浮かせて悲痛な表情でセシルとカインを見ていた。 株との隙間から見える世界から少女を外したくても、朱色に染まる視界の全ては現実を見せ付けてしまう。 この子の身を守ることが僅かでも罪滅ぼしになるのなら。 渦巻く炎がセシルの脳裏に鮮血をフラッシュバックさせる。 クリスタルの略奪を――
https://w.atwiki.jp/299nobe/pages/62.html
パシッ!! 「!?」 セシルが右の手のひらに微かな衝撃を覚え我に変えると、少女は先程と形相を変えて 顔を伏せて、右手を振りかぶっていた。ハッと今の状況を思い出す。 セシルが彼女の手を取ったとき、彼女は汚いものに触れたかのように手を振り払ったのだ。 「このままだと君も死んでしまう!」 嗚咽をまじえて少女はさらに強く二人を睨みつけ、じりと後ずさりをしている。 「…いや!」 ――君も、死んでしまう。君も、殺してしまう。 小さな困惑がセシルの思考を一瞬遅らせ、その後間髪をいれずにカインがセシルの肩を押さえ前に出て腕を伸ばした。 「やむを得ん、無理やりにでも連れて行くしか!」 「ちかよらないでぇええーっ!!」 ド…ン 少女の布を引き裂くような甲高い悲鳴に空気が震えた。 「待ってくれ!ぼくは…」 「来ないで!来ないでよぉっ!!」
https://w.atwiki.jp/299nobe/pages/60.html
「可哀想だが、この子も殺らねばならんようだな」 「カイン!」 少女に向けられた鋭い穂先と、それを握る友人の顔を、信じられない思いでセシルは見た。 「殺らねば俺たちが殺られる! 気付いてるだろう、一歩間違えば、俺たちも炎に巻かれていた!! 「…………!」 「それでも構わないと、王はお考えだった。ここで任務にしくじれば、粛清は目に見えている」 息を呑んだセシルに、憐れむような眼差しを投げかけるカイン。 彼はセシルより、たった一つ年上であるに過ぎない。だが、その一年が大きな意味を持つ少年時代を、ふたりは共に過ごした。 自然と形作られる、兄弟に似た役割の差。その結果が今、現れている。 たぶん、彼の言うことが正しいのだろう。 「だからって……子供だぞ!」 「陛下に逆らえるか?」 「こんな殺戮を繰り返してまで、陛下に従うつもりはないっ!」 ミシディアで浴びた血の臭いも薄れぬうちに、こんな光景を見せ付けられれば、もうたくさんだ。 たとえその選択が、カインとの決別をも意味しようと、退くつもりはない。 「フッ、そう言うと思ったぜ。 ひとりでバロンを抜けるなんて、させやしないさ」 無我夢中の叫びに、カインの腕から力が抜けた。兜の下からのぞく口元が、人の悪い笑みを浮かべる。 「……カイン?」 「いくら陛下に恩があるとはいえ、竜騎士の名に恥じる真似を、出来る訳なかろう」 親友のくせに、そんなことも分からないのか──子供っぽい拗ねた口調に、セシルは赤面する思いだった。こんな幼い少女を本気で彼が手にかけるなど、一瞬でも信じてしまうとは。 「だが、バロンは世界一の軍事国家。俺たちふたりが粋がった所でどうにもなるまい。 他国に知らせ、援護を求めんことにはな」 あさっての方を向いたまま、強引に話を続けるカイン。彼が照れていることが、今のセシルは手に取るようにわかる。 「ローザも救い出さんと!」 「ありがとう。カイン」 率直な感謝に、ますますカインは照れた。首が真横を向いている。さんざん掌で踊らされたセシルの、ささやかなお返しだ。 「別に、お前の為じゃない」 ただの照れ隠しにしては、その声はやや硬かった。
https://w.atwiki.jp/299nobe/pages/54.html
濡れ輝く床に伸びた幻獣の骸が、細かな霧の粒となって掻き消える。出口から差し込む光に、白く浮き上がった靄をかき分け、セシルたちは洞窟を抜けた。 ミスト側の出口は、東西に伸びた谷の端に位置している。左右に迫った峰を見渡し、冷え冷えとした空気を深く吸い込んだ。いくら壮観であろうとも、長く地底に留まるのは、やはり2人の気性に合わない。 「どうやら無事に着けそうだな。 厭な予感がしていたんだけど」 天を刺す古木の合間、蛇行しながら伸びる道の彼方に、かがり火らしき光が見えている。霧深い谷底の村では、一日中こうして火をともしているのかも知れなかった。 直に目的地を確認し、一息ついたセシルをからかい半分にカインが諌める。 「その油断が危ないのさ。落とすぞ」 「そのときは、ドラゴンに壊されたって事にでもしようか」 唇の端を歪め、左腕に巻きつけた袋を軽く持ち上げるセシル。幻獣の攻撃で背嚢の紐が千切れてしまったため、こうして手で持っていくことにしたのだ。中に入れていたポーションの瓶も、岩場に叩きつけられた際の衝撃で、半分以上が割れてしまった。 片手が塞がってしまうのはできれば避けたい所だったが、下手に修繕しようとしてかえって不安定になるよりも、こちらのほうが良いと判断したのだ。 「フッ。それじゃもう一匹出てくる前に、さっさと行くとしようか」 ミストの村はすぐそこだ。幻獣を退けてからは、魔物が現れる気配もない。任務の成功は疑いないように見えた。 それでいてふたりとも、何故か、得体の知れない不安を抱えている。既に幻獣は倒したというのに、現れる前よりもむしろ危機感が募っていた。過度の緊張に陥らないよう、互いに冗談を言い合いながらも、気を緩めることはない。 だがいくら彼らが己の精神をコントロールしようとも、漠然とした予感は、人知れず明瞭な悪夢へと変貌を開始していた。 形なき霧が凝縮し、鉄をも噛み砕く竜の顎と成ったように。
https://w.atwiki.jp/299nobe/pages/63.html
少女の悲鳴は耳に入らず。 セシルの視界はまるでスローモーションであった。 手を伸ばし、拒まれ、瞬きで目に映る景色が切り替れば 年端もいかぬ女の子が口を大きく開いて何かを訴えている。 助けなければいけない。 彼女の命を救わなければ。 そんな焦燥感に駆られ、セシルはカインの手を振り払い少女の手首を掴んだ。 今、彼女を助けられるのは自分たちしかいない。そう強く信じた。 ――だけど今、彼女を危険にさらしたのは… 「お母さんを返してぇえええっ!!!!」 ―――!! 一瞬だった。何が起こったのかなどと考える余裕も与えられず、 セシルは自分の足が、いや体が突き飛ばされたように背後に倒れこまされるのがわかった。 背中を地面に打ち付けた衝撃で視界は少女の上方に移る。 そしてセシルは召喚士の脅威を目の当たりにした。 少女の後ろに、赤銅の肌の軽く城の一角にも匹敵するかのような巨人が立ち構えている。 「みんな……みんな」 セシルは、辛うじて轟音の中で少女の呟きを聞いた。 それから巨人がその巨大な足を持ち上げるのを見た。
https://w.atwiki.jp/kagi/pages/54.html
登録タグ:EBI@バキ勢 MFC ガイル ケン ブランカ ベガ ルーファス 春麗 本田 1回戦第5試合 先鋒戦 1回戦第5試合 決定戦 2回戦第3試合 先鋒戦 2回戦第3試合 決定戦 準決勝第2試合 先鋒戦 準決勝第2試合 決定戦 決勝戦 先鋒戦 1回戦第5試合 先鋒戦 #zoome 元サイトURI:http //zoome.jp/mfc/diary/13/ EBI@バキ勢(EL) - レグ(CH) 1回戦第5試合 決定戦 #zoome 元サイトURI:http //zoome.jp/mfc/diary/15/ EBI@バキ勢(EL) - URIAN(HO) 2回戦第3試合 先鋒戦 #zoome 元サイトURI:http //zoome.jp/mfc/diary/33/ EBI@バキ勢(EL) - 様式美(KE) 2回戦第3試合 決定戦 #zoome 元サイトURI:http //zoome.jp/mfc/diary/35/ EBI@バキ勢(EL) - ねろたん(VE) 準決勝第2試合 先鋒戦 #zoome 元サイトURI:http //zoome.jp/mfc3/diary/3/ ナルカワ(BL) - EBI@バキ勢(EL) 準決勝第2試合 決定戦 #zoome 元サイトURI:http //zoome.jp/mfc3/diary/5/ せこい@バキ勢(RU) - EBI@バキ勢(EL) 決勝戦 先鋒戦 #zoome 元サイトURI:http //zoome.jp/mfc3/diary/9/ EBI@バキ勢(EL) - WILD AH(GU) 名前
https://w.atwiki.jp/new2souennokanntai/pages/831.html
トップページ イベント攻略 [部分編集] 報酬 勝利回数 1 Hard ★5 岩本徹三 VeryHard ★6 岩本徹三 Extreme ★7 岩本徹三 Inferno 錬成鋼x5選択券 x4 [部分編集] Hardの編成 敵戦力:29078 陣形:梯形陣 重油消費:30 時間・天候:昼・晴 敵構成 : 戦艦、戦艦、空母、空母、空母、潜水 敵旗艦技 : 獅子奮迅の大雄(雷撃・速力 +35%、敵艦装甲 -35%) 敵戦艦戦技 : 絶対堅守ナル軍紀 x2、金剛不動の構え x2、羅刹の霧笛 x2 技能 : 敵空母戦技 : 万里の攻爆、不滅の鳳王、ヴィクトリア・アーミー、邁進する鳳凰、蒼天舞龍、破砕の豪爆、龍神の凱旋、怒髪翔天の轟爆、鉄檻からの飛翔 技能 : 爆撃機 150機 x3 敵潜水戦技 : 深海の潜影、暗闇ヲ奔ル雷跡、鋼砕の連雷 技能 : 未分類技能 : 火力上昇5、雷撃上昇5、戦技発動上昇5 VeryHardの編成 敵戦力:96926 陣形:梯形陣 重油消費:30 時間・天候:昼・晴 敵構成 : 戦艦、戦艦、空母、空母、空母、潜水 敵旗艦技 : 獅子奮迅の大雄(雷撃・速力 +35%、敵艦装甲 -35%) 敵戦艦戦技 : 絶対堅守ナル軍紀 x2、金剛不動の構え x2、羅刹の霧笛 x2 技能 : 敵空母戦技 : 万里の攻爆、不滅の鳳王、ヴィクトリア・アーミー、邁進する鳳凰、蒼天舞龍、破砕の豪爆、龍神の凱旋、怒髪翔天の轟爆、鉄檻からの飛翔 技能 : 爆撃機 150機 x3 敵潜水戦技 : 深海の潜影、暗闇ヲ奔ル雷跡、鋼砕の連雷 技能 : 未分類技能 : 火力上昇5、雷撃上昇5、戦技発動上昇5 Extremeの編成 敵戦力:138466 陣形:梯形陣 重油消費:30 時間・天候:昼・晴 敵構成 : 戦艦、戦艦、空母、空母、空母、潜水 敵旗艦技 : 獅子奮迅の大雄(雷撃・速力 +35%、敵艦装甲 -35%) 敵戦艦戦技 : 絶対堅守ナル軍紀 x2、金剛不動の構え x2、羅刹の霧笛 x2、忿怒の一撃 技能 : 敵空母戦技 : 万里の攻爆、不滅の鳳王、ヴィクトリア・アーミー、邁進する鳳凰、蒼天舞龍、破砕の豪爆、龍神の凱旋、怒髪翔天の轟爆、鉄檻からの飛翔、シスター・サラ 技能 : 爆撃機 400機 x3 敵潜水戦技 : 深海の潜影、暗闇ヲ奔ル雷跡、海震の弾雷 技能 : 未分類技能 : 火力上昇5、雷撃上昇5、戦技発動上昇5 Infernoの編成 敵戦力:138466 陣形:梯形陣 重油消費:30 時間・天候:昼・晴 敵構成 : 戦艦、戦艦、空母、空母、空母、潜水 敵旗艦技 : 獅子奮迅の大雄(雷撃・速力 +35%、敵艦装甲 -35%) 敵戦艦戦技 : 絶対堅守ナル軍紀 x2、金剛不動の構え x2、羅刹の霧笛 x2、流麗なる巡洋、スカイディーバ、忿怒の一撃 技能 : 敵空母戦技 : 万里の攻爆、不滅の鳳王、ヴィクトリア・アーミー、邁進する鳳凰、蒼天舞龍、破砕の豪爆、龍神の凱旋、怒髪翔天の轟爆、鉄檻からの飛翔、シスター・サラ 技能 : 爆撃機 400機 x3 敵潜水戦技 : 深海の潜影、暗闇ヲ奔ル雷跡、百折不撓の潜艦、鋼砕の連雷、海震の弾雷 技能 : 未分類技能 : 火力上昇5、雷撃上昇5、戦技発動上昇5 ↓コメント等 名前 閲覧数 今日: - 昨日: - 合計: -
https://w.atwiki.jp/masayoshizard/pages/238.html
第9話「邂逅」 「おまわりさん、大丈夫ですか?」 何者かが俺が突き飛ばしてこかした警察官に手を伸ばす。 その男は、俺の見知った顔だった。 そいつは、警察官の手を掴むとよいしょと起こした。 「神谷……」 それは、クラスメイトの神谷だった。 こんな夜遅くに、何でこんな場所に……と思う。 まあ、どうでもいいが。 「おまわりさん、どうしましたか?」 神谷は、助け起こしてもボケーッと突っ立ってる警官に声を掛ける。 「……これが気になりますか?」 そう言って、神谷は自らの手を挙げ手の甲を警官に見せつけるように。ひっくり返した。 「流行ってるんですよ。このタトゥー……シールですけどね」 神谷の手の甲には不可思議な……どこかの民族の紋様のようなイレズミがあった。 しかし、神谷のヤツ、一体どういうつもりで、こんな事話してるんだ……? 刺青シールなんて、警官に話すような事でもないのに。 何か意図でもあるのか? 「……なぁ、おい、森本よぉ?」 神谷がこちらに話を振ってくる。 一体なんなんだよ……そんなイレズミ聞いた事も見た事もねぇよ。 「ほら、ここに……」 そう言って俺のTシャツの袖をめくって肩を警官に見せた。 何を言っているんだ、こいつは。 俺はそう思いながら、神谷の指差す自分の肩に目を向けた。 俺は驚いた。 そこには、神谷の手の甲にあったようなイレズミがあったからだ。 「ね、流行ってるんですよ。これ――分かるでしょう? ねぇおまわりさん……僕の言っている意味、分かりますよね?」 神谷がそこまで言うと、警官は何も言わずに立ち去った。 俺は何が起こったのか分からずに警官が見えなくなるまで言葉を出せずにいた。 「どういうことだ?」 俺は神谷に問う。 神谷と警官のやり取りが意味不明な異次元のやり取りに見えたからだ。 突き飛ばした俺に何のお咎めもなく立ち去った警官といい……。 「そうだな。まず確認しておくが、君は聖杯戦争の事は何も知らないんだよな……」 聖杯戦争だって……? 聖杯って……何か凄いコップ的なアレか……? 「ああ知らん、何だそれは」 神谷は一瞬思案したように、自らアゴに手を持っていき口を開く。 「……ならば、順を追って話をしよう。 君からすれば、信じられない事かもしれないが、まぁ取り敢えず黙って聞いてくれ」 「聖杯戦争。 それは、7人の魔術師がマスターとなり、それぞれ7人の英霊を召喚し、最後の1組になるまで戦う殺し合いだ。 君の親父さんは魔術師であり、親父さんの祖先は聖杯戦争の骨組みを作った人間であった」 「はぁ!? ちょっと待ってくれ! 親父が、魔術師???」 「黙って聞けと言っただろう。話半分でも眉唾でなんでもいいから黙って最後まで聞け」 「あ、ああ……」 色々言いたい事もあったが、神谷の鋭い目線が俺の言葉を飲み込まさせた。 俺は頷く。 「君の親父さんの祖先は優秀な魔術師であったそうだが、親父さん自身はそういった世界には無関心だったようだ。 聖杯戦争に対しては黙認するつもりだったようだが、進んで関わる気は無かったようだしな。 だが、僕達のようなこの土地の魔術師はそういう事情を知っていたが、余所者は知らなかったようだな。 先程、余所者の魔術師の襲撃に遭い、亡くなられたよ。僕も急いで駆け付け――」 「お、おい! は!? 親父がなくなったとか……え?」 「君が混乱するのは無理もない。 君は今までそういう世界の中に生きてきたのだからね」 「ッチ!! 何そんな悟ったツラで、親父が死んだと言ってんだよ!!」 俺は思わず目の前の馬鹿野郎の胸ぐらを掴んだ。 「森本、落ち着け。取り敢えず僕の話を聞け」 『実に平和ボケしてるねぇ……まぁ、一樹の言うとおり、仕方ねぇったら仕方ねぇんだろうけどよォ~』 「おい、ライダー……」 スッと煙でも沸いたかのように突然、俺の真横に福耳のオッサンが現れた。 どっかの民族衣装のような恰好の奇天烈なオッサンだ。 「何だよ、お前は!」 俺は神谷を突き飛ばし、後ろに下がる。 『俺はライダー……騎兵っちゅう枠に分類されとる英霊だぜ。 それで、どうするんだい。一樹よォ。俺ぁ、ここでとっとと始末しといた方が手っ取り早いと思うけどな』 「始末、って、俺を殺すつもりか?」 「僕は話を聞け、と言っている。 ライダーも暫く黙っていろ。 3度目になるが、森本も話を聞け。 次に口をはさむならば…………ちっ、まあ、話を聞け。 僕も暇ではない。君の心情は察するが、何度も同じ事を言うのは無駄なのを理解してほしい」 俺は仕方なく、頷いた。 もしかしたら、神谷は頭がおかしくなっているのかもしれない。 もしかしたら、神谷は俺を騙して楽しむ性悪なヤツなのかもしれない。 だが、さっきから奇妙な事が立て続けに起きてるのは事実だ。 その情報を持っているのが、眼の前の気に入らないヤツかもしれないなら、取り敢えず話だけは聞いてみようという気に俺はなった。 福耳のオッサンもまた、神社の石段に腰を下ろし、足を組む。 話を続けろって事だろうか。 「僕がこの場に駆け付けたのは、僕がこの彼方市の管理者である魔術師であるからだ。 異形の者によるトラブル――今回の場合は余所者の魔術師だな。 そういったトラブルの対処も管理者である僕の仕事であるから、”一般人”である君を助けに来たのだ。 できれば、君の親父さんを助けたかったという気持ちは本当だ」 そこに来て、事務的な発言しかしていなかった森本は非常に申し訳なさげな表情を見せる。 俺の知らないところで、コイツは親父とも何か面識があったのかもしれない。 「……君の肩、僕の手の甲にある紋様は”令呪”というものだ。 それは聖杯戦争のマスターである資格となるもの。だが、恐らく君は魔術師では無い。 そういう力としての素養はあるようだが、君の思考・行動は魔術師からは程遠い存在だ。 君は魔術の行使ができないだろう?」 俺は神谷の問い掛けに首を縦に振る。 「僕は君には聖杯戦争の辞退を勧めるよ。 隠さず言うが、先程の警官は君の親父さんを襲撃した魔術師が操っていた存在だ。 僕が来なければ、君は令呪を奪われ――君の場合は、肩口から先を切断されて、殺されていただろうね」 辞退、か……。 しかし、殺されてたとか、どうにも信じがたい話だな。 『信じられねぇ~っつぅ顔してるからサービスで教えてやるけど、一樹は嘘は言ってないぜ。 どちらかというと、お前にとっての安全面に十二分に配慮した話をしてると俺は思うぜ』 福耳のオッサンが頬杖をつきながら、そう言った。 「教会に行けば、東郷という男が君を保護してくれるだろう。 立場上、教会は聖杯戦争における中立に位置する。 マスターとしての権利は失うが、それが君が生き残れる術だろうね。 まあ、僕の話は以上だよ」 「……お前の言いたい事は分かった。 親父が殺されたってのは実感が湧かんが……」 「だろうね。まあ、僕の言った事は他言無用で頼む。 魔術の世界なんてものは、君達の世界では認知されてないからね」 「ところで、聖杯戦争ってのは……」 「ストップだ。君は教会で保護される。 そして、単なる一般人として今まで通りの生活を送る。 余計な事は考えるな。この後すぐに教会まで行って保護して貰え」 『ってこった。良かったな、小僧』 言い終わると、俺の言葉を遮るように二人は風のように消え去ってしまった。 「くそ……明日のバイトとかどうすりゃいいんだよ」 あと、母ちゃんに何て言やいいんだ……。 集合住宅の方が騒がしい。 サイレンの音も五月蠅いな。 明日から充実した夏休みが始まると思っていたのに……。 「いや、もしかしたら可愛いシスターさんとかいるかもしれないな」 そう考えると少しテンションが上がってきた。 「……教会、行ってみっか!」 俺は自室に戻り、携帯と財布をポケットに仕舞い、町の教会へ行くことにした。